喘息治療におけるβ2刺激薬の役割

β刺激薬の投与経路の変遷

20年以上前の過去のデータでは,β刺激剤というと経口薬か吸入薬かという 2つの選択肢しか存在せず,またその結果(改善率・副作用など)はいずれも吸入薬の方が良好であった。

その後,ドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発によって,貼付薬が発売され,この『経口薬vs吸入薬』という構図は『吸入薬vs貼付薬』へと変わっていった。


“SABA”か“LABA”か

以前はメプチンエアーの1日4回吸入などの定期吸入用法も用いられていたが, 海外で「β刺激剤の治療中止後,気道の過敏性が増加する」という報告を受けて,それらの処方はなくなっていった。

つまり,メプチンエアーのような短時間作用型のβ刺激剤は,定期的に繰り返し使用することで,気道の収縮・拡張を繰り返し,それに伴い気道平滑筋の筋肉の肥厚をもたらすということである。

これにより,SABA(Shortactingβ2-agonist)は発作のときのみに使用し,安定期には使用しない,LABA(Longactingβ2-agonist)は1日24時間の効果を期待して,継続的に使用するという使い分けが確立された。


喘息治療の基本は吸入ステロイド

長期管理薬(キサンチン製剤・LABA・LT拮抗薬)はそれに劣るという結果が,FINEStudyという大規模臨床試験の結果,示された。

上述の吸入ステロイド以外の長期管理薬は,吸入ステロイド単剤でコントロールが不良の時に使用を考慮すべきである。

ちなみに,吸入ステロイド以外の長期管理薬の気管支拡張効果の強さは,LABA,キサンチン製剤,LT拮抗薬の順である。 


吸入ステロイドのみでコントロール不良時は…

吸入ステロイド単剤で喘息のコントロールが不良のときは,ステロイドを増量するよりも,LABAを加えた方がよいことが,近年のメタアナリシスで示唆されている。

吸入ステロイド単剤でコントロール不良時に,ステロイドを倍量に増やすよりも, また,キサンチン製剤やLT拮抗薬を併用するよりも,LABAを追加した方がコントロールがよいのである。

これには,下図のような,ステロイドとLABAとの相互補完的な効果も関係していると考えられている。


呼吸機能のサーカディアンリズム

呼吸機能は,24時間周期のサーカディアンリズムを示し,明け方の4時頃に最も低下する。( = モーニングディップ ) つまり,メプチンエアーの定期吸入(1日4回)のように,寝る前にSABAを使用しても,モーニングディップは防げないのである。 


ホクナリンテープの特徴

β刺激薬の中で,唯一の貼付剤であるが,その利点は何よりもコンプライアンスの良さである。

最近行われたインターネットによる調査で,ホクナリンテープは吸入ステロイドやLABAよりもコンプライアンスが良好であるという結果が出た。
インターネットを通じての調査ということで,医療従事者の目を気にせず,限りなく本音に近い返答があったことを考慮すると,この結果はある意味,極めて真実に近いものであるとも言える。

また,海外での報告によると,セレベント単独使用により,死亡率が上昇したとの結果が示されているが,ホクナリンテープに関しては現在,同様の報告はあがっていない。