ラミシールについて

真菌感染

・ 真菌は土壌中などにも存在するが、基本的にヒト‐ヒト感染が最も多い感染経路。
・ 感染後4〜10日程で症状が現れ、2〜3週程で炎症が起こる。
・ 皮膚糸状菌の胞子は離脱後1年間は(肌やバスマット上などで)生存可能。


爪白癬

現在、国内の爪白癬患者は推定1460万人であるが、そのうち実際に治療を受けているのは159万人と、およそ10人に1人しか治療は受けていないのが現状である。

爪白癬自体は生命に関わる疾患ではないが、爪に異常がある高齢者では転倒のリスクが高まる、又は、糖尿病患者では爪白癬から患部壊死につながる恐れがある、などと言った報告もある。

若年健常者では、上記のようなリスクは少ないが、QOLの低下(見た目が汚いため、女性ではサンダルが履けないなど)や、家族を含めた他者へ感染させる恐れがあることなどのリスクがあるので、治療の意義はあると思われる。

また、爪白癬以外に水虫を持っている患者では、爪が白癬菌の温床となり、水虫の再発リスクが高まる。


抗真菌薬の作用機序

抗真菌薬の作用機序には、大きく分けて“静菌性”と“殺真菌性”の2つがある。

静菌性 … 真菌細胞壁エルゴステロール合成を阻害する。
→ 菌の成長を止めるだけなので服用中断により再発しやすい。

殺真菌性 … 真菌細胞内のスクアレンの濃度を上昇させ、真菌自体を死滅させる。
→ 菌自体が死滅するので服用中止後も再発率は低い。


ラミシールの特徴

ラミシールは、“静菌性”と“殺真菌性”の両方を持ち、また、MIC*1MFC*2がほぼ同じで非常に高い効果が期待できる。

また、組織内への貯留性が高く、外用で7日後まで、内服であればおよそ1年間は患部組織に残っている。

イトリゾールとの違い

・ 他薬併用

イトリゾールはP‐450を阻害するので併用禁忌、併用注意が非常に多い。
爪白癬の治療対象者には高齢者が多く、併用に注意を払わなければならないイトリゾールは使いづらい。

・ 治療効果

また、治癒率、再発率ともにラミシールの方が優れている。

・ 価格

イトリゾールのパルス療法では、ラミシールの連日服用に比べて合計薬価がおよそ2倍になる。

・ コンプライアンス

イトリゾールの主流であるパルス療法は、服用期間と休薬期間があるので、患者の理解度が低いとコンプライアンス不要につながりやすい。

外用薬の塗布のポイント

なるべく広い範囲に塗るように心がける。

症状は指先でもカカトから再発した事例もあるので、足全体に塗るような気持ちで塗るようにする。

*1:MIC : 最小発育阻止濃度

*2:MFC : 最小殺真菌濃度