ジェニナック錠について

特徴

従来のキノロン系よりも肺炎球菌に効果が高いのが特徴。

最近では耐性菌*1が多いのが問題視されており、耐性菌にも有効な強い抗菌力及び抗菌スペクトル、そして耐性菌自体を生じさせない薬剤が求められており、ジェニナックはそれを満たしたものである。

また、近年のキノロン系に多い呼吸器疾患に的を絞ったレスピラトリー・キノロンである。

薬物動態

食事の影響を受けないため、食前/食後、どちらの服用でも問題ない。

AUC/MICが多剤に比べて圧倒的に高く、PK/PD理論的にも有効性が示されている。

フィルムコーティング錠であるため、粉砕は不適。(苦味を生じる恐れがある)

副作用

特にジェニナックに特徴的な副作用はない。

最近のキノロン系でよく言われる「耐糖能異常」に関しても、第?・?相臨床試験重篤な例は出ておらず、血糖値低下、上昇に関してもそれぞれ、1.3%、1.8%と特に問題のない結果であった。

キノロン系の副作用に対する偏見

キノロン系の副作用や併用注意に関しては、ある特定の薬剤に関する事象を全ての類薬にも当てはめようとする偏見染みたものが多い。
例えば、NSAIDsとの併用で痙攣発作を起こしやすいのは“エノキサシン”であり、光過敏症の副作用を起こしやすいのは“スパルフロキサシン”であるが、どちらも全てのキノロン系に当てはまると思われがちである。
また、Al、Fe、Mg、Ca等の金属イオン類とキレートを形成し、吸収を低下させるのはキノロン系全般の特徴だが、全ての金属イオンと全てのキノロン系薬剤が同様に反応するわけではない。
このように一口にキノロン系と言っても、個々の薬剤に特徴があるのだが、そこまで考慮されていないのが現状である。

耐性菌発現リスクへの対策

1/10^8〜1/10^9の確率で出現するが、その耐性菌の発育を阻止する為に重要なのが下図の“MPC”及び“MSW”の理論である。


“MIC*2”は最近の発育を阻止する濃度で、通常の感受性菌の発育は阻止されるが、変異した耐性菌は生き残り増加する可能性がある。
このような変異耐性菌の発育をも阻止できる濃度が“MPC*3”である。
そしてこの2つの間の濃度域を“MSW*4”といい、耐性変異した菌のみが増殖する濃度範囲と考えられている。


このように、“MIC”“MPC”“MSW”の3つに着目すると、各種抗菌薬は以下のように考えることもできる。

MICが低くMSWが狭い例

このような薬剤では耐性菌発現のリスクは低い。

MSWが広くMPCが高い例

このような薬剤では通常感受性菌の発育は抑えることができるが、変異耐性菌が増殖するリスクが高い。



つまり、耐性菌の出現を抑えるためには、血中濃度が“MPC”を超えるような十分量を投与することが必要である。
このことから“MPC”が低く,かつ“MSW”が狭い薬剤ほど耐性菌の発現するリスクの低い薬剤であり、ジェニナックはこの条件を満たした効果的なレスピラトリー・キノロンであるといえる。

*1:ペニシリン耐性肺炎球菌・レボフロキサシン耐性肺炎球菌・アンピシリン耐性インフルエンザ菌 など

*2:Minimum Inhibitory Concentration

*3:Mutant Prevention Concentoration

*4:Mutant Selection Window