抗菌薬のまとめ(特にPK/PDあたりについて…)

抗菌薬の作用と特徴

抗菌薬には“静菌作用”を示すものと“殺菌作用”を示すものがあり、また、それとは別に“時間依存性”の薬剤と“濃度依存性”の薬剤とがあります。

下記の表にそれぞれの代表的な薬剤をまとめてみました。

時間依存性と濃度依存性

この2つについては、最近、PK/PD理論の普及に伴って一般的な概念となってきました。
このPK/PD理論で大事なパラメータは次の4つです。


1.Cmax : 最高血中濃度
2.AUC : 血中濃度‐時間曲線下面積
3.time above MIC : MIC以上の濃度が保たれている時間
4.trough値 : 最低血中濃度


図にすると下図のようになります。


時間依存性の薬剤は、最小発育阻止濃度(MIC)以上の薬物濃度に菌が接する時間がどれだけ長いかが、抗菌作用に相関します。つまり、1回に高用量を投与するより投与回数を増やして“time above MIC”を長くすることが重要になります

これに対して、濃度依存性薬剤は、1回毎の投与時の最高血中濃度(Cmax)をできるだけ高くした方が、より良い抗菌作用を期待できます。つまり、投与薬剤を小分けにするより大きな山を作る投与計画*1、即ち“Cmax”又は“Cmax/MIC”が大きくなるようにすることが重要です。

PAE

抗菌薬が菌に接した後、抗菌薬を除いても、しばらくの間、菌の増殖薬生作用が残存することをPAE*2といいます。

これは薬剤によって違い、例えば、βラクタム系はグラム陽性菌に対して2〜4時間程度のPAEを示しますが、グラム陰性桿菌には効果を示しません。一方、アミノ配糖体、キノロンマクロライド、テトラサイクリン系などはいずれもグラム陽性菌/陰性桿菌に対して、数時間の効果を示します。

参考資料

これらのPK/PD等を踏まえた抗菌薬の基礎知識については、第一三共株式会社の発行している『抗菌薬の使い方 ‐適正使用を目指して‐』*3に詳しく書かれています。




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*1:ただし、ある濃度以上は安全性の面で問題があるので、1回投与量は自ずと制限されます。

*2:postantibiotic effect

*3:非売品ですので第一三共さんにもらいましょう。