そろそろPBLにも答えておくか

PBLを学ぶセミナーに参加しました


PBL(Problem Based Learning:問題立脚型学習)をご存知でしょうか?参加者が中心となり、少人数のSGD(Small Group Discussion:スモールグループディスカッション)形式で自らの知識を確認し、課題を解決に導く勉強法です。

今、薬学部の教育現場で、このPBLが非常に注目されているとのこと。*1私が学生の頃は、教授が一方的に話す講義形式が一般的でしたが、最近はSGDを駆使して問題解決能力を上げることに力を入れているようです。しかも、チューター役の教授は教えたらダメ*2という徹底ぶり。はたして、今の学生はどのような講義を受けているのか非常に興味深いところです。


先日、このPBLを学ぶ社外セミナーに参加したのですが、そこで感じたことを3つほどまとめてみます。

1. 基本的な知識が不可欠


セミナーでは、某大学教授主催のもと、参加者がそれぞれ少人数グループを作り、一つの課題を解決に導くというものでした。

しかしここで早速問題が発生。

課題解決のため「KJ法」を利用するのですが、このあたりの全体説明をしないまま各班に進行を任せてしまったのです。「KJ法」を知ってる参加者は各班に1〜2人程度。「KJ法」ぐらい予習してから来いということなのでしょうか?私は幸い指導薬剤師WSなどを通じて知ってましたが、「KJ法」をあの場で初めて聞いた人は、どのように感じたのでしょう?混乱していなければいいのですが…。

各班のチューターにある程度の説明を任せるのはいいのですが、根幹となる部分(今回のケースでは「KJ法」)は主催者から全体説明を行って参加者全員が共通のコンセンサスを得ることが重要だと思いました。

2. ゴールの見えない議論ほど疲れるものはない


今回のセミナーは3日連続の研修なので、1日で全ての課題解決には至りません。ということは、必然的に、その日の終了時点のイメージが必要になるわけですが、これも全く説明がありませんでした。各班の議論が煮詰まってきたタイミングで、「じゃぁ次はこうしてみて…」といった感じ。

あまり最終形にこだわりすぎては、自由な議論の妨げになるのはわかりますが、ある程度のガイドラインがないと進行を組み立てるのに苦労します。

自由な発想が出るように工夫しつつ、かつ、「○時○○分までにこの形にまとめてください」といったゴールの設定も必要ではないかと思います。

3. その視線の先には何があるか


最後はちょっと皮肉っぽくなりますが、主催者の大学教授の意図がいまいち見えてこなかった気がします。PBLは優れた学習方法であり、それを学ぶことは重要なのですが、現場の薬剤師としては最終的にそれを患者さんへの服薬指導に活かしたいと考えることでしょう。

つまり、薬剤師の視線の先には患者さんの顔が見えますが、大学教授の視線の先には学生しか見えてないのではないかと感じるわけです。

今回のPBLセミナーは非常に有益で得るものもたくさんあったのですが、指導薬剤師WSを越えるものではなかったと感じました。それは思うに、指導薬剤師WSのときは薬剤師会主催であり、参加者もタスクフォースもほとんどの方が患者さんを直接見てる人たちだったからではないでしょうか?その点、今回のセミナーは大学教授が主催ということで、どうも学問臭い雰囲気から抜け出しきれていない気がしました。

まとめ


PBLは問題解決のための優れた方法ではありますが、その先には必ず患者さんの存在があるはずです。今後、PBLを学んだ6年制の薬剤師が出てくることがあっても、どこまでそれを理解しているか…今回セミナーを受けてちょっと不安に思いました。

PBLだ、SGDだ、と格好つけてばかりでなく、目の前の患者さんのために何かすることが一番重要なのだと再認識できたことが今回のセミナーの最大の収穫ですかね。

*1:医学部などでは既に以前から導入されているらしいです。

*2:PBLにおけるチューターは参加者から答えを導き出すのが仕事であり、解答を言ってしまってはいけない。