腰が痛いとか気にするな

腰痛患者の割合


日本人の10人中7人は腰痛であるという説もあるように、腰痛というのは非常にポピュラーな疾患です。
また、医学が発達しているにも係わらずこの割合は年々増加傾向にあります。

ちなみにアフリカの狩猟民族には腰痛はないそうですので、現代病の一つということになりますね。

腰痛の分類


一般的な腰痛のおよそ85%は原因が特定できない非特異性腰痛であると言われています。この非特異性腰痛の90%は何もしなくても自然に完治し、残り10%が慢性腰痛に移行します。

非特異性でない残りの15%は骨折、ヘルニア、腫瘍等が原因で起こる腰痛です。

この中で最も重要なのは腰椎などにできる腫瘍です。50歳以上の0.4%に腫瘍があると言われています。
確立はかなり低いのですが、重篤度を考慮すると、見過ごすわけにはいかないのです。たいていの腫瘍であればレントゲンを撮ればわかります。店頭で「50歳以上の腰痛で、今まで一度も医療機関にかかったことがなく、OTCや民間療法のみで治療している方」から相談を受けた場合、まずは一度医療機関を受診するようにお話しましょう。

年齢と姿勢


腰痛は加齢とともに現れやすいと思われがちですが、初発年齢は男女共に20歳代がピークです。つまり、最も働き盛りの年代で腰痛が現れるということになります。

通常、腰の骨は1つで1tまで耐えることができるといわれていますが、骨粗鬆症になるとこれが1/4程度になると言われています。つまり、高齢になってからは腰痛より圧迫骨折のリスクを考慮すべきなのです。*1

また、人間の姿勢では立っているときよりも座っている時の方が腰に負担がかかりやすいといわれていますので、長時間運転しなければならないドライバーの方などは、職業病として腰痛の発症リスクが高まります。

腰痛に関するエビデンス


よく腰痛に関連するといわれる事柄に下記のようなものがあります。

  • 骨棘形成(骨が擦り減りギザギザになってくる)
  • 変形性脊椎症
  • 骨粗鬆症
  • 骨盤の非対称(骨盤・背骨のゆがみなど)

実は、これらの因子は全て腰痛発症には関係ないというエビデンスがあります。

また、仕事や車の運転、レジャーによる身体的負担よりも遺伝的因子の方が影響があることも示唆されています。今後は、親がヘルニアだったら、こどもは早めに遺伝子治療を受けた方がよい…なんていうことになっていくかもしれません。

腰痛の治療


腰痛の治療には「自分自身の努力で回復する」という気持ちが重要となります。「あぁ腰が痛い、これは病院に行かなくちゃ…」「お医者さんが飲めというからこの薬を飲まなくちゃ…」などと考えるような受身の人は治りにくいのです。

よく安静にすること、ストレッチ等の運動療法なども比較されますが、普段通りの日常生活を送った人が最も回復が早かったというエビデンスもあります。

薬物治療


欧米のガイドラインでは、第一選択薬がアセトアミノフェンで、次にNSAIDs、その次がアセトアミノフェン+リン酸コデインとなっています。ミオナールテルネリンのような筋弛緩薬は原則として、1週間までしか用いません。
また、抗うつ剤やSSRIが腰痛に効くという話題も最近よく耳にしますが、実際にはそこまで効果があるわけではないようで、あくまで「効く人もいる」という程度の認識みたいです。

漠然とした痛み止めの連用はいけませんが、痛みをずっと感じていると痛みに関する閾値が下がったり、痛みを伝えるレセプター数が増えたりして、さらに痛みを感じやすくなるので、一時的にでも痛みを取り除くことは重要です。ただし、痛みが引いたらなるべく早めに薬に頼るのはやめて、これまで通りの日常生活に戻る努力をした方がよさそうです。

*1:圧迫骨折は必ずしも痛みを伴わないので腰痛とは分けて考えた方がよい。