医療安全対策委員会レポート

リスクマネジメント


高リスク薬の中でも、特に“インスリン製剤”と“抗がん剤”については要注意。

インスリン製剤

これまでは入院中にインスリン製剤について十分な薬識を得てから、院外の調剤薬局に来る患者が多かったが、今後はインスリンの外来導入が増える傾向にあるので、薬局でインスリン製剤の指導が必要になってくる。
凍結防止等のインスリン投薬時チェックリストが必要になる。

抗がん剤

ティーエスワンの休薬期間を知らずに、連続服用させた事例があった。
普段から扱いに慣れている薬局であれば、休薬期間のことなど当たり前のことであるが、全く扱ったことのない薬局にしてみればわからないこともある。
基本的なことから知識の習得や薬局間での知識の共有化・フィードバック*1が大切になると思われる。

衛生面での問題点

衛生

・薬包紙は都度変える。
・落ちた薬物は使わない。
・間違った薬剤は処分する。
・錠剤を割るときは手袋をはめる。
・パソコンのキーボードが最も汚いことを認識。

調剤

・1日の作業は計量器のセットから始める。
・始業時の点検事項をリスト化。

その他

・冷蔵庫の中に温度計を入れる。
・ペーパータオルを準備する。


どれも当たり前のことだが、伊賀上野の事件のことがあってから衛生面のチェックは特に厳しく入念に行なうこと。
特にあの事件以来、ペーパータオルは最近とてもよく売れているらしい。*2

薬包紙や落ちた薬物の使いまわし等は、それを見た実習中の学生や患者さんから薬剤師会へ報告が行った例もあるので要注意。
常に見られているという意識を持って調剤に臨む(ある程度のパフォーマンスも大事)ことが重要である。

後発品の問題点

後発品導入時の問題

ある報告によると後発品に変更したうち50%が先発品に戻るとか、医師が後発品に変えたくない医薬品がある(ノルバスクやアダラートCR)というが、薬局ではどのように対応すべきか?
数ある後発品の中から自分の薬局で使用するものを選ぶときの基準は何か?

薬剤師は薬のプロ

医師が後発品に変えたくない薬があるというが、果たして薬物動態にそこまで気を使っているのか?
“アダラートL分3投与”から“アダラートCR分2投与”への変更は同じか?血中濃度推移は変わっていないのか?

薬剤師が治療方針に口出しすると医師は「治療のことに口を出すな」と言うだろう。
では、医師が後発品のことを言うとき(この薬は後発品に変えたくない等)、薬剤師はなぜ何も言わないのか?
医師に対して「添加物のタルクやステアリン酸マグネシウムのことを学んできたのか?薬物動態の知識がどれだけあるのか?」と言い返さないのはおかしくないか。

主観と客観

医師が後発品が効くかどうかを実感するときは、主に患者の言うことを聞いてからである。
つまり、患者が「この薬に変えてからなんとなく効かない気がする」などと言うのを聞いて判断しているのである。
これは即ち、“主観的”な判断である。

薬剤師は患者を診断しないかわりに薬という物質に対して必要な知識を用いて分析・検討する。
即ち“客観的”な判断である。

両者の見解が異なるのは当たり前であり、また、常に主観的な意見が客観的な意見より正しいとは限らない。

判断に責任を持つ

アムロジピンの後発品がたくさん発売されたが、どのようにして採用品を選択したか。
薬剤師であれば大量十分なデータから客観的判断によって選択すべきである。

しかし、残念ながら添付文書の内容が全て正しいとも限らない。
そこからさらに一歩踏み込んだ判断基準を持てるかどうかも必要である。
例えば、ある薬剤師は茶こしに先発品と後発品を入れて湯の中に入れて溶解する様子を比較検討して判断基準の一つにしたとのこと。
溶解性試験の代わりにしかならないかもしれないが、その目で見て判断したことは患者に説明するときの自信にもつながる。
元来、薬局薬剤師は町の化学者とも言われていたのだから、このような古典的な発想もこれからは重要になるのかもしれない。

*1:薬剤師会を介してこのようなフィードバック機構が働けば一番良いのだが

*2:ウェットシートはアルコール分がすぐに揮発してしまうので不適