失敗学と調剤のリスクマネジメント

失敗学

畑村洋太郎氏の「 図解雑学 失敗学 」を読みました。
本当は原著の「失敗学のすすめ」の方が良いような気もしましたが、時間もないので、エッセンスだけ凝縮された「図解雑学シリーズ」にしました。

失敗学 (図解雑学)

失敗学 (図解雑学)

失敗学のすすめ

失敗学のすすめ


元々は製造業についての事象がメインのような感じでしたが、仕事全般に生かせるアイデアが豊富な良書でした。
『失敗』というネガティブなキーワードについて、とてもわかりやすくまとめてくれています。

本書の内容はどんな仕事にも応用できる内容ですが、今回は自分の仕事である『調剤』という視点から考えながら読みました。

ポイント

本書の内容の中で個人的にポイントとして押さえておきたい点は以下の3点です。

失敗情報の性質

失敗情報は時間が経つと減衰したり、歪曲化されたりします。
また、一つか二つのフレーズに単純化されたり、ローカル化したりもします。

つまり、失敗情報は簡単に伝わるものではないことをまずは覚えておく必要があります。

→ 調剤過誤の情報は正確に広く伝わっているでしょうか?

失敗情報の伝え方

失敗を伝えるには、結果だけでなく、“事象”・“経過”・“原因”・“対処”・“総括”の全てを正しい脈絡をつけて記述することが重要です。
そうすることで、一つの失敗が将来使えるように“知識化”されるのです。

→ 調剤過誤報告書の書式は問題ないでしょうか?

暗黙知を生かす

人の頭の中にある言葉になっていない知識を、どのようにみんなで活用できるようにするか、即ち、暗黙知を顕在化させることが重要です。

→ ベテラン薬剤師と若手薬剤師の間に、知らない間に暗黙知の溝ができていないでしょうか?

調剤の失敗学

調剤で考えると、やはり最大の失敗は調剤ミス・過誤・事故だと思います。

絶対にあってはならないことなのですが、今の技術では、絶対に100%起こらないようにすることもできないでしょう。
そこで、過去の失敗事例を参考にして、失敗しないための対策を練ることが重要なのです。

そして、そんなときに大事になってくるのが、上記の3点です。

調剤過誤や調剤事故はどうしても直視しにくい問題ではありますし、できれば闇に葬りたい問題でもあります。
しかし、今後二度と同じ失敗を繰り返さないためにも、知識化・データベース化して、後に役立てることが大切ですね。

どれも当たり前のことですが、本書を読んで、あらためて過誤に対する見方、リスクマネジメントの考え方が少し変わった気がします。