ジェネリック医薬品の普及に関する私的考察
ある保育園での事例
ある保育園での事例をもとに、再度、このインセンティブについて考えてみます。
あるところに、親が遅刻して時間通りに迎えに来ないことに、悩んでいる保育園がありました。
そこで対策を練り、保育園は時間を過ぎたら、毎回こども1人につき3$の延長料金をもらうことにしました。
これで、みんな時間通りに迎えに来てくれると思っていましたが、予想に反して、遅刻する親が増えてしまいました。
たしか、こんな例だったと思います。
なぜ、遅刻する親が増えてしまったのかを考えるのに、先ほどのインセンティブが関係してきます。
この例では、遅刻することへの罪悪感(道徳的インセンティブ)が、延長料金という経済的インセンティブで置き換わってしまったことがまず一つ。
さらに、その経済的インセンティブがたった3$という安さであったことも重要です。
つまり、通常なら遅刻に対して罪の意識を感じるところですが、たった3$で免罪符を買えることになり、結果として、遅刻を増やしてしまったということになります。
ジェネリック問題
では、いよいよ本題のジェネリックの問題です。
薬局の立場で考えると、ジェネリック普及に関する経済的インセンティブは30%を超えて加算をもらえること。
社会的インセンティブは、ジェネリックの普及を通して国の財政を少しでも楽にすること。
道徳的インセンティブは、患者さんの負担金を少しでも安くしてあげること、といえるでしょうか。
国としては、社会的インセンティブや道徳的インセンティブの観点から、もっとジェネリックが普及してほしいと思っているでしょう。
しかし、薬局の立場としては、変更率30%という経済的インセンティブを簡単にクリアできてしまうので、それ以上頑張ることはしないでしょう。
つまり、現在のジェネリックの普及が遅れている原因は、社会的・道徳的インセンティブに比べて、経済的インセンティブが低すぎることだと思います。
そう考えると、今春の改定内容が発表された時点で、そんなにジェネリック普及が進まないと予測できそうなものですけどね。
今後の予想
では、今後ジェネリックの普及を進めるためには、どうすればよいか。
一番効果的なのは、経済的インセンティブのハードルを上げることではないでしょうか?
つまり、現状の変更割合30%から、数量ベースで30%にするとか、使用品目割合で30%以上にするとか…。
また、現在のように何%という具体的な数字で固めると、その目標を達成したら、それ以上のインセンティブが働かなくなるので、30%以上で何点、40%以上ならさらに何点加算といったように、段階的なハードルを設けることも効果的といえるでしょう。
結局お金でしか動かないのかと思われるかもしれませんが、物事を進める上で、経済的インセンティブはとても大きな要因になると思います。
次回の改定で、国がどのような方針を打ち出すかが見物です。